時は1999年。
私は大学生でした。
食べるもの、身の周りのもの、肌に触れるもの。
特に何も考えず『はやっているから』、『いい香りだから』という理由で、
そこに含まれる成分を気にすることもなく、選び、使っていました。
特に意識もせず、疑問も持たずという感じで、ただ漠然と消費していました。
そんな毎日を送っている私が、突然、1個の石鹸に180度以上意識を
変えられてしまいました。
私の中の石鹸の常識を大きく覆す、無骨な石鹸でした。
白くてつるつるで、芳香を放つ上品な石鹸とは縁遠い、茶色で緑がかった
その石鹸はマリウスファーブル社の「サボン ド マルセイユ ワイルドローズ」と
いう名前で、無骨な風貌に少しだけバラの香りがしました。
恐る恐る泡立てネットを使って、洗顔すると、ふわふわでサクサクな軽い泡が
たっぷり立ちました。
そっと顔に撫で付けると意外に肌当たりがなめらかで、クリームのような
感触でした。
頑固そうでゴツゴツした印象の石鹸が、こんなに力強くも優しい洗い上がりに
なるなんてと、とても驚きました。
いつも気付かないふりをして使い続けていた、合成の洗顔料のペットリした感触が
まったくなく、しっとりと潤う肌に感動しました。
洗顔だけではもったいない!と体に使えば、いつものボディシャンプーを使った
後のように『ぬっとりするのに、乾燥する』という事もなく、スルスルした手足を
何度も頬ずりしてしまうほどでした。
それからすっかりこのバラの香りの無骨な石鹸の感触の虜になりました。
この石鹸以外の世界中の石鹸に果てしない憧れを抱くようになりました。
虜になってしまうだけではなく、はまればはまる程、知りたいことが溢れ、
どうしようもないくらいに知識欲が騒ぎ出しました。
マルセイユ石鹸とは?そもそも石鹸とは?界面活性剤とは?について、
大学を4年で卒業できないほど、調査・研究に没頭しました。
(結局5.5年通うことに・・・これは余談です)
今日現在のように、インターネットで検索をすれば、ある程度の知りたいことが
調べられるという時代ではなかったので、あまりインターネットは頼りにならず、
文献だけでは情報が古く、満足ゆくものではありませんでした。
結果、自分の足で本物のオイルを求めて、精油を求めて、石鹸を求めて、
アルバイトで資金をつくっては、地中海沿岸の町へ繰り出しました。
そんな私と石鹸とその周辺のお話しをさせて頂こうと思います。