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■#04 港町マルセイユ

当初の予定では、マルセーユ・プロヴァンス国際空港からまっすぐに憧れの
地・マルセイユに行く予定でしたが、面白そうな状況に流されやすい私は、
たくさんの寄り道をしていました。


やっとのこと、港町マルセイユに辿りついたのですが、想像とずいぶん違って、
驚いてしまいました。
魚市は活気があって、何時間でも見学していたい気持ちなりました。
様々な国籍の人たちで賑わう公園では、みんなが思い思いに過ごしている
のんびりとした風景が多く見られました。
ただ、右も左も分からない私のような日本人が一人で歩くのは、あまりお勧め
できないと感じたのも事実です。

Aubenasで出会った日本人のアドバイス通り、女性に限らず土地感や場慣れ感が
ない者の一人歩きは、それほど安全なものではなさそうだと直感で分かる場面と遭遇してしまいました。
マルセイユを一人で観光するならば、信頼できるガイドを雇ったり、
ツアーで回るなどの対策が必要だと思います。


しかし、そういう私は『表通りならば、一人で歩いても安全』という思い込みで、
Vieux Port 駅から徒歩8分ほどの市庁舎の裏手の地区(パニエ Panier 地区)を
目指して、どんどん歩きました。
途中、フランス語や知らない国の言葉で話し掛けられはしましたが、
どうにか無事にパニエ地区に到着しました。


パニエ地区にはたくさんの石鹸工房があり、お土産にと石鹸を売る屋台が
ひしめいていました。
立ち寄りたい気持ちを抑え、ずっとあこがれていたマリウス・ファーブル社の工房を
目指して早足になります。
しかし、寄り道好きな私は一つの石鹸屋台の前で立ち止まりました。
看板には『とてもナチュラルな本場のマルセイユ石鹸』と英語で表記されています。手にとって石鹸の外見を観察すると、残念ながらとても『ナチュラル』には見えませんでした。

女性観光客の獲得めあてか、色が鮮やかなピンクでした。
天然のクレイなどで石鹸に着色したとしても、こんなにあざやかなピンクには
なりません。匂いも人工的なバラのような匂いがしました。
確かにバラの精油はとても高価なので、石鹸に入れるには、もったいないのかも
しれません。
しかし、こんな石鹸の本場のマルセイユでも表記と内容が異なる石鹸が
『ナチュラル』なものとして平然と販売されていることに驚きました。

急いで、付近の石鹸屋台に駆け込んで確認したところ、マリウス・ファーブル社の
ような石鹸もあることにはあるのですが、観光客が喜ぶのか人工的な着色が
施されていたり、人工的な匂いが着香されていたりと、自然で本当に良いものでは
ないことは明らかでした。
そうした『加工』をなされた石鹸の方が、売れるというのは、残念でした。


やっと再びマリウス・ファーブル社の工房に向かいます。
小さな石鹸工房や石鹸屋台をぬけ、頼もしくそびえる市庁舎の裏に着きました。
寄り道ばかりしていて、だいぶ到着が遅くなってしまい、はやる心を抑えるのに
苦労しました。
観光客向けの工場見学として、詳しい解説などをしてくれるガイドこそ付きません
でしたが、時間をかけてゆっくりと工場を回ることができました。


この石鹸はこだわり商品研究所さんの商品説明にあるように、原材料は極めて
単純です。上質なオイルと水と苛性ソーダ。そして「バリラ海草の灰」。
それに地中海の海水です。海水は余った苛性ソーダや混入してしまった不純物を
塩析を丁寧に繰り返すことで取り除きます。
その原料のどれもがとにかく上質で、とても丁寧に作られています。
オリーブオイルで保湿と洗浄力、ココナツオイルで起泡力、パームオイルで固さと保湿を出すという、肌にやさいいだけでなく、大変バランスの良い石鹸です。
マリウス・ファーブル社のマルセイユ石鹸の使い心地が良いのは、
上質なオイルを絶妙であり伝統のバランスで配分し、丁寧な手作業で作り上げる
からだと改めて思いました。


石鹸が生まれる瞬間を見てみたい!と旅に出て、今こうして工場の見学に
立ち会っているのですが、とても長い時間をかけて作られるので、原料から石鹸として使える状態になるまでを『生まれる瞬間』とするのならば、とても立ち会うことなどできませんでした。
しかし、石鹸がそれはそれは大事に育まれている過程を、全てではありませんが、見学でき、職人の情熱の結晶としての石鹸に敬意を持つに至りました。


帰国後、工場見学の帰りに購入した石鹸を崇めるように、なでたり重さを手の中で
楽しんだりしているうちに、今度は石鹸の原料であるオイルや着香に使う精油に
ついて衝動的な知識欲にさいなまれるようになっていしまいました。
学生という身分をフルに利用し、例え1年や2年卒業できずに留年することも
厭わない覚悟もこの頃したように思います。


石鹸的コラム

T氏の石鹸的コラム。現在、某IT系企業に勤めるT氏。(女性)彼女は学生時代に石鹸に目覚め。その学生生活を石鹸の研究に没頭。石鹸に適したオイルを求めて海外旅行先を決めるというほど、のめり込む。石鹸にかける情熱は、筋金入り。
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