中鎖脂肪酸とは

中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸について説明をしたいと思います。

脂肪酸は、炭素数の長さによって短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸という分類がされます。一般的な脂質は、長鎖脂肪酸なのですが、この中鎖脂肪酸という脂質が、長鎖脂肪酸とは違う、おもしろい働きをします。

中鎖脂肪酸のことを知ることは、オイルを選択するうえで必要な情報です。
中鎖脂肪酸を説明するなかで、脂肪酸の吸収と代謝、MCT、ケトン体という言葉が避けて通れません。それらをまとめてみました。

◆ 中鎖脂肪酸  MCFA(Medium Chain Fatty Acid)

中鎖脂肪酸という脂肪酸の分類方法があります。
「特徴的な働きをする」脂肪酸のカテゴリーです。
ココナッツオイルなどに多く含まれます。
中鎖脂肪酸の紹介をします。

中鎖脂肪酸とは


●中鎖脂肪酸は、一般的に炭素鎖数8~12の脂肪酸のことです。

C(炭素数)8・・・ カプリル酸
C(炭素数)10・・・ カプリン酸
C(炭素数)12・・・ ラウリン酸
※ラウリン酸(C12)は、中鎖脂肪酸に入れないことがある。

●炭素数14以上は長鎖脂肪酸といいます。
パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸などです。
脂肪酸の多くは長鎖脂肪酸です。

中鎖脂肪酸は、どんな食品に含まれているの?


ココナッツオイル(やし)、パーム核油(アブラヤシ)。
・哺乳類の母乳。牛乳とか。
・よってバター、チーズなどにも。
人の母乳
・それ以外の食品には多く含まれない。
・哺乳動物には、中鎖脂肪酸を乳に配合させる仕組みがある。・・・子供の成長に必要な栄養素と考えられる。

中鎖脂肪酸の含有量は?


・中鎖脂肪酸の3種類の脂肪酸の中では、一般的にラウリン酸が配合量として多く、カプリル酸、カプリン酸は、少ない。

  やし油(ココナッツオイル) 人の母乳 バター
カプリル酸 5.8~8.3% 程度 0.3% 1.5%
カプリン酸 6.1~6.5% 程度 1.7% 2.2%
ラウリン酸 46.8~51.2% 程度 5.8% 2.5%

中鎖脂肪酸の特徴


・一般的な長鎖脂肪酸で構成される油は水に溶けない。
・中鎖脂肪酸は、わずかながら水溶性。炭素数が短いほど水溶性が高い。
炭素数が短いため、長鎖脂肪酸より消化、吸収が簡単。だからエネルギーになりやすい
・速やかにエネルギーとなることから、栄養不良などの改善に使用されてきた

ケトン体の生成が起こりやすい。
・中鎖脂肪酸は、肝臓でエネルギーとして代謝されるか、ケトン体に変換されて各臓器においてエネルギー源として使われるか、どちらか。余剰の脂肪として蓄積されない。

中鎖脂肪酸の消化吸収とエネルギー化


・消化吸収代謝は、長鎖脂肪酸とは大きく異なる。
・中鎖脂肪酸は、複雑な消化吸収、代謝の過程が非常にシンプル。
・長鎖脂肪酸より速やかにエネルギーとなる。
・余剰の脂肪として蓄積されない。

◆ ラウリン酸(C12)

中鎖脂肪酸の3つの脂肪酸。
その中でラウリン酸は、中鎖脂肪酸に含めないことがあります。
長鎖脂肪酸と似たような働きをするからです。
しかし、ラウリン酸は特徴的な機能性を持っています。

ラウリン酸は、中鎖脂肪酸には含めないことも


ラウリン酸・・・C12(炭素数12)
ラウリン酸は、中鎖脂肪酸に含めない場合がある。
ラウリン酸は、消化吸収経路が、長鎖脂肪酸に似ている。
長鎖脂肪酸と同じように、血清コレステロール濃度を上昇させる。

ラウリン酸の特性・機能性


しかし、ラウリン酸は、特別な機能性を持っている。

・抗菌作用

・免疫賦活作用
・抗炎症作用
・脳機能との関連性

など多くの機能性が報告されている。
この機能性を注目する必要がある。
母乳に入っている理由も、この機能性があるからなのでは。

◆ MCTオイル(Medium chain triglyceride)

ラウリン酸は、中鎖脂肪酸の中では長鎖脂肪酸と似たような働きをするため、ラウリン酸の配合比率を減らして、カプリン酸、カプリル酸の比率を増やしたMCTというオイルがあります。
MCTは、いわゆる中鎖脂肪酸の特徴的な機能性をクローズアップしたオイルなのです。

MCTオイルとは


・ココナッツオイルは、ラウリン酸(C12)の比率が半分近くある。
・カプリン酸(C8)、カプリル酸(C10)を合わせると12~15%程度の比率。
カプリン酸(C8)、カプリル酸(C10)の比率を高くしたオイルがMCTオイル。
・カプリン酸(C8)、カプリル酸(C10)の比率を80~100%にしたオイル。
・カプリン酸(C8)、カプリル酸(C10)の機能性にフォーカスしたオイル。

MCTの特性


・1960年には、MCTの研究がされていた。
・炭素数が短いため(C8とC10)、長鎖脂肪酸より消化、吸収が簡単。エネルギーになりやすい。
・MCTは、エネルギーになる最大値は摂取3時間後。10時間以内にはほとんどが分解。
・効率は長鎖脂肪酸の数倍以上。
体内に蓄積されることはない。
・血中のトリグリセリド濃度を高めない。
ケトン体への変換が起こりやすい。

MCTの活用用途・機能性


・高齢者への栄養補給。
・脳細胞のグルコース代謝が低下した場合の代替エネルギー。
体脂肪蓄積抑制。食事誘発性体熱産生が理由ではないかという説がある。摂取直後から、安静時のエネルギー消費を高める。(ケトン体が骨格筋のエネルギーになるため?)
・他

MCTの注意点


糖尿病の方への大量摂取は注意が必要。
ケトアシドーシス状態の糖尿病患者には禁忌。
肝機能障害を持つ場合など、不安な場合はかかりつけのお医者様に相談する。

◆ ケトン体

MCTオイルを食べることで増えるケトン体という物質があります。
ケトン体は、グルコース以外では唯一脳のエネルギーになります。
多くの機能性が報告されている注目の物質です。

ケトン体とは


・β-ヒドロキシ酪酸(主成分)

・アセト酢酸
・アセトン
の総称

・脂肪酸を原料に生成される。
骨格筋心臓腎臓などのエネルギー源となる。
・脳のエネルギーとしては唯一とされていたグルコースの代替エネルギー。

※アセトンは、エネルギー源にならない。

ケトン体の特徴


脳血液関門を通過してグルコースに代わる栄養源として脳に用いられる。
・脳はグルコースを優先的にエネルギー源として利用するが、グルコースが少ない時にはケトン体が主たるエネルギー源となる。
骨格筋心臓腎臓などのエネルギー源となる。
・ケトン体自体が抗酸化物質。
・多くの機能性が報告されている。

・グルコースが不足して糖質飢餓状態になった場合に、ケトン体がつくられる。
MCTオイルは、摂取するだけでケトン体を増やすことができる
・MCT摂取後の血中ケトン体の上昇は、経時的に減少し6時間程度で元に戻る。

◆ 中鎖脂肪酸の活用

中鎖脂肪酸の特性を説明してきました。
この中鎖脂肪酸をどのように活用していくのかをまとめました。

迅速なエネルギー源として(C8、C10)


短鎖脂肪酸(カプリン酸、カプリル酸)は、速やかにエネルギーになる脂肪酸。
例えば、食が細くなった高齢者へのグルコースとは別のエネルギーとして活用。
1gで9キロカロリーのため、効率が良い。

ケトン体を増やすことによる脳のエネルギー源として(C8、C10)


・脳のエネルギー源は、グルコース。
・ケトン体は、血液 脳関門を通過できる。
・ケトン体を脳の代替エネルギー源として活用する。

脂肪をエネルギーにする回路を動かしておく(C8、C10)


・中鎖脂肪酸は、脂質として効率よくエネルギー源になる。
・中鎖脂肪酸(MCT)は、摂取するだけでケトン体を増やすことができる。
・脂肪をエネルギーにすることに身体を慣れさせる。

体脂肪の蓄積を抑制する(C8、C10)


・中鎖脂肪酸の体脂肪蓄積抑制。
・食事誘発性体熱産生との関連が指摘されている。
・摂取直後から、安静時のエネルギー消費を高める。

ラウリン酸の機能性に注目して(C12)


・抗菌作用

・免疫賦活作用
・抗炎症作用
・脳機能との関連性
など多くの機能性が報告されている。
この機能性に注目する。

ラウリン酸も含めたココナッツオイルとしての機能の研究もおこなわれている。
中鎖脂肪酸として、3種類の脂肪酸(C8、C10、C12)が合わさった機能性にも注目。


※参考文献

この記事は、以下の会や、本などで情報収集、勉強したことを参考に書きました。

日本脂質栄養学会
日本リポニュートリション協会
脂質栄養学(菅野道廣 著:幸書房)
脂質クオリティ(有田誠 編集:羊土社)
オーソモレキュラー・ニュートリション・エキスパート養成講座






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