油 ( 脂質 )は、脂肪酸を理解するとよくわかる

脂肪酸

油 ( 脂質 )は、脂肪酸を理解するとよくわかる

アブラは、3大栄養素のひとつ


一口にアブラと言いますが、いろいろなアブラが存在します。

身体の中で合成されるアブラ。食べ物から食べなければいけないアブラ。食べ過ぎ注意のアブラ。食べなければいけないアブラ。バランスを考える必要があるアブラ。酸化しやすいアブラ、酸化しにくいアブラ。

アブラを一括りで捉えるのではなく、脂肪酸で考えることでわかることがたくさんあります。
アブラは、3大栄養素のひとつです。食生活には欠かせません。
脂肪酸で考えることができれば、エイジングケアを考えた食生活をする上で役にたつことが、たくさんあります。

アブラの脂肪酸組成


アブラは、ひとつの脂肪酸だけで成り立っているわけではなく、複数の脂肪酸が集まってできています。いくつかのアブラの脂肪酸組成をご紹介します。おおよその目安とご理解ください。

大豆油 リノール酸51%、オレイン酸24%、パルミチン酸12%、α-リノレン酸9%、他
オリーブオイル オレイン酸75%、パルミチン酸11%、リノール酸9%、他
こめ油 オレイン酸41%、リノール酸37%、パルミチン酸16%、他
えごま油 α-リノレン酸60%、オレイン酸15%、リノール酸10%他
インカインチオイル α-リノレン酸50%、リノール酸30%、オレイン酸8%、他

脂肪酸の分類


脂肪酸は、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)が、鎖のように結合してできています。
炭素の数(鎖長)や、炭素と炭素の二重結合の数によって性質が異なります。
それらの違いによってグループ分けがあります。

まず脂肪酸は大きく、飽和脂肪酸不飽和脂肪酸という分け方があります。

◆ 飽和脂肪酸

飽和脂肪酸

● 炭素と炭素が2本の手でつながっている個所を「二重結合」と言います。二重結合が1個もない脂肪酸を飽和脂肪酸と言います。
● 飽和脂肪酸は、最も酸化しにしにくいアブラです。
● 飽和脂肪酸には、炭素数の違いで、短鎖脂肪酸中鎖脂肪酸長鎖脂肪酸の3種類があります。
● 日本人の食事摂取基準(2020年版)では、飽和脂肪酸の1日の摂取量の目安を総摂取カロリーの7%以下としています。(飽和脂肪酸の長鎖脂肪酸のことと思われます。)

  脂肪酸名称 二重結合の数 炭素の数
短鎖 酢酸 0 2
短鎖 プロピオン酸 0 3
短鎖 酪酸 0 4
中鎖 カプリル酸 0 8
中鎖 カプリン酸 0 10
中鎖 ラウリン酸 0 12
長鎖 ミリスチン酸 0 14
長鎖 パルミチン酸 0 16
長鎖 ステアリン酸 0 18

(飽和脂肪酸の)長鎖脂肪酸


肉系の脂は、飽和脂肪酸の長鎖脂肪酸です。これが、食べ過ぎ注意のアブラです。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、飽和脂肪酸の1日の摂取量の目安を7%以下としていますが、これは飽和脂肪酸の中でも、長鎖脂肪酸を主なターゲットにしていると思います。

ミリスチン酸 ココナッツオイル、パーム核油
パルミチン酸 動物性の脂肪に多く含まれる。
パーム油、ラード、牛脂、バター
良い働きもあるが、動脈硬化などの原因となるため摂り過ぎに注意。
ステアリン酸 動物、植物性脂質の中に多く含まれる飽和脂肪酸。
豚肉、牛肉、牛脂、ラード
カラダにたまりやすい。食べ過ぎ注意。

中鎖脂肪酸


話題になったココナッツオイルは、中鎖脂肪酸が多いアブラ。
消化が早く、短時間でエネルギーになります。
ココナッツオイルは、用途を理解して使うことが大切です。
酸化しにくいので、加熱料理用のアブラに向いています。
早くエネルギーになるため、MCTオイルのようにエネルギー補充のために食べるとかです。

カプリル酸 ココナッツオイルに含まれる。
素早くエネルギーになるため身体にたまりにくい。
ケトン体になりやすい。
MCTオイルに多く含まれる。
カプリン酸 ココナッツオイルに含まれる。
素早くエネルギーになるため身体にたまりにくい。
ケトン体になりやすい。
MCTオイルに多く含まれる。
ラウリン酸 ココナッツオイルに含まれる。
専門家によっては、長鎖脂肪酸に分類する場合もある。
母乳にも含まれる。


「中鎖脂肪酸」のことをまとめたページをつくりました。

短鎖脂肪酸


短鎖脂肪酸は、食物繊維を食べると大腸内で腸内細菌が短鎖脂肪酸を産生します。
短鎖脂肪酸は身体の中で様々な良い働きをします。
短鎖脂肪酸は、食品から食べるというより、腸内細菌が産生させることの方がクローズアップされています。

「短鎖脂肪酸」のことについて書かれているページです。

◆ 不飽和脂肪酸

脂質

● 炭素と炭素が2本の手でつながっている個所を「二重結合」と言います。二重結合が1個以上ある脂肪酸が不飽和脂肪酸です。
● 不飽和脂肪酸は、酸化しやすいアブラです。
● 身体の中で合成できる一価不飽和脂肪酸と、必ず食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸(多価不飽和脂肪酸)があります。
● 二重結合のある位置によって、オメガ3オメガ6オメガ7オメガ9などに分類されます。

不飽和脂肪酸   二重結合の数 炭素の数
● 体の中で合成できる   一価不飽和脂肪酸  
パルミトオレイン酸(パルミトレイン酸) オメガ7 1 16
オレイン酸 オメガ9 1 18
       
● 食品から必ず食べる必要がある(必須脂肪酸)   多価不飽和脂肪酸  
リノール酸 オメガ6 2 18
α-リノレン酸 オメガ3 3 18
γ-リノレン酸 オメガ6 3 18
アラキドン酸 オメガ6 4 20
EPA オメガ3 5 20
DHA オメガ3 6 22

オメガ9(オレイン酸)


オリーブオイルに多く含まれる脂肪酸。約70数%。
● エネルギー源。
体内で合成できる。
不飽和脂肪酸の中では酸化しにくい。
LDLコレステロールを下げる。
美容オイルとして多く活用されている。乾燥肌の予防にも効果的。
体に溜まるので、摂り過ぎには注意。

オメガ7


パルミトオレイン酸は、マカダミアナッツに多く含まれる。
● エネルギー源。
体内で合成される。
不飽和脂肪酸の中では酸化しにくい。
血管を健康に保つ。
皮膚の老化を防ぐ働きがあるとされている。

オメガ6(リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸)


●体内ではつくることができないため、食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸です。
●正確には、オメガ6系の必須脂肪酸は、リノール酸のことです。


●オメガ6は、リノール酸を先頭にする系列のアブラです。
体内で酵素の働きにより、リノール酸からγ-リノレン酸、アラキドン酸をつくることができます。
リノール酸・・・植物油、サラダ油全般に多く含まれます。また、見えない油として、多くの食品に含まれます。大豆や米、小麦などにも含まれる。


●オメガ6は、ウイルスや病原菌から身体を守ります。オメガ6脂肪酸が白血球に攻撃せよと命令するようです。NHKスペシャルでは、身体を守る防衛隊長という表現をしていました。
●ところが、増えすぎると大問題です。攻撃指令が過剰になり、白血球が自分の体まで攻撃するようになります。アレルギー促進、炎症促進作用があることも知られています。


●必須脂肪酸で身体に必要なアブラではあることは間違いないのですが、サラダ油、見えない油の摂取で食べ過ぎが問題となっています。
意識的に減らすことが大切。


γ-リノレン酸・・・月見草油、ボラージオイルに含まれる。様々な良い効果があるとされている。

脂質

オメガ3(α-リノレン酸、EPA、DHA)


●体内でつくることができないため食べ物から摂取する必要がある必須脂肪酸です。
●正確には、オメガ3系の必須脂肪酸は、α-リノレン酸のことです。


オメガ3は、α-リノレン酸を先頭にする系列のアブラです。
体内で酵素の働きにより、α-リノレン酸からEPA、DHAをつくることができます。EPAに変換されるのは10%程度。DHAに変換されるのは、1%程度とされます。


α-リノレン酸・・・えごま油、亜麻仁油、インカインチオイル、くるみなどに豊富に含まれます。
EPA,DHA・・・主に魚介類に含まれます。寒い時期の魚の方がEPA、DHAが多い。刺身の方が良い。焼かない方が良い。酸化されない状態で食べた方が良い。
酸化しやすい。熱に弱い。


オメガ3系脂肪酸は炭素鎖が曲がっているため、細胞膜が柔軟に変形しやすくなります。細胞膜の柔軟性にかかわっています。その結果、血管がしなやかになり、血液サラサラ→動脈硬化や心臓病になりにくいという特徴があります。


オメガ3系脂肪酸は、高度な脳機能にかかわる部分に密集しています。
オメガ3系脂肪酸で人体のある部分が大進化を遂げた・・・それは、高い知性の芽生えです。オメガ3系脂肪酸は、脳を育む材料。知性の源だった(NHKスペシャル)


●母乳にもオメガ3系脂肪酸が含まれます。
●オメガ6脂肪酸のアレルギー、炎症作用を抑える効果もある。(オメガ6と反対の効果を持つ。


●必須脂肪酸は、食べないと枯渇します。一生食べ続けるべき脂肪酸です。
オメガ3系脂肪酸は、意識的に食べないと食べられない。
オメガ3系脂肪酸を摂取することによって産生される代謝物も身体に様々な働きをする。

オメガ3とオメガ6のバランス

●必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6はカラダの中で合成できないため、食べたバランスがそのまま体内のバランスに表われる。


オメガ3系脂肪酸:オメガ6系脂肪酸のバランスは、1:2が自然の摂理
それを越すと心臓病での死亡リスクが急激に増える。動脈硬化の原因にもなります。
現代人は、食生活(アブラ)のバランスの偏りによって、1:10 くらいになっている人が多いようです。


●オイル(油脂)のバランスの偏りとは、オメガ6脂肪酸過剰とオメガ3の摂取不足です。
現代の食生活は、オメガ6脂肪酸を普通にたくさん食べる環境ができています。揚げ物、炒め物、サラダのドレッシング、見えないアブラ・・・オメガ6脂肪酸を過剰に摂取してしまったおります。
対して魚食の減少、オメガ3系脂肪酸の食材が少ないため、オメガ3不足の方が多いのが実際です。

脂質

脂肪酸の性質を考えた摂取方法


●飽和脂肪酸の長鎖脂肪酸は、食べ過ぎない。

・肉系の脂他
・飽和脂肪酸は、7%以内に抑えることが推奨されている。


●オメガ6脂肪酸は意識的に控える。
・サラダ油、見えない油


●オメガ3脂肪酸を意識的に食べる。
えごま油、亜麻仁油、インカインチオイル、魚


●加熱料理には、一価不飽和脂肪酸か、飽和脂肪酸の中鎖脂肪酸。
オリーブオイルココナッツオイル


●脂質は、どの脂質を食べるか、自ら選択することができる。


参考リンク

●「体に良いアブラ」って何?その答えは“人類の進化”にあった!

●知ってお得! オメガ3:オメガ6のバランス改善によい油の選び方・使い方

●人類を繁栄に導いた“アブラ”アブラにまつわる「2つの大事件」とは?

●人類を救う理想のアブラ!? オメガ3との付き合い方


以下の本、受講したセミナーなどで勉強した内容を参考にしました。

一般社団法人日本リポニュートリション協会
日本脂質栄養学会
脂質栄養学(菅野道廣 著:幸書房)
油のルール(守口徹:朝日新聞出版)
油の正しい選び方・使い方(守口徹:日本文芸社)
「食品の化学」が一冊でまるごとわかる(齋藤勝裕:ベレ出版)






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